こちらのクリップデモムービーは、近年益々深刻になりつつあるその「大気汚染問題」に関心を高めてもらおうと市民の協力で作られた物の一つ。
サランシュからこの動きが始まり、レ・ズッシュ、シャモニーと、特に子供同士、子供を持つ家族同士がアイディアを出し合い、出来の良いビデオを作り上げています。
このビデオはサランシュのそれですが、テレビでも取り上げられ大いに話題となったものです。


目を引くのが、マスクをしている子供たちの背後で大気に広がる白いベールとかすみのかかった太陽。

そう、この「白いベール」が「汚染層」なのです。

 

このモン・ブラン山系の麓の町々は11月末以降大気汚染警報が発令したままになっています。

 

ビデオ作製に携わったメインの人物のうちの一人は

「25年前、喘息に苦しめられていたパリ地方での生活を離れ、このモン・ブランに安住の地を求めてきたのだけれども、、、この12月に5歳になる息子が喘息の兆候にある事が判明し、常時薬を服用しなければいけない状態になってしまった。これが「ヨーロッパ最高峰を目の前に住む」という代償なのか。」と嘆いています。

 

シャモニーやサランシュを含めた「モン・ブラン山系の麓」に住む人々は毎日の様に都市圏以上の微粒子を浴びているとの報告。
全体の二酸化炭素排出量の70~80%を占めているのが暖炉から放出されるそれ。毎冬60%ほどを記録していたのが、今冬は寒波の影響でかその使用率、それに伴う排出量が上がってしまっているようです。
車の排気ガスが次いで2位の23%、工場からの排気が12%という結果。

 

大気汚染が特にひどいサランシュでは昨年12月から屋外のスポーツ施設や遊技場での活動が禁止されたり、自粛要請が出されたりしています。
小学生は外に出ることさえ禁止され、中学生以上は外で走り回る事が禁止されているとも(現在は緩和されているのではないかと思うのですが)。
但しそれは私立に限ってで、公立校では強制はされていなかったようですが、外で子供たちの姿がほとんど見られないという奇妙な光景が広がっていたことと思います。

 

これだけ報道された上、「住人から観光客まで、全ての人に激しい運動をすることが禁じられている」という噂まで一人歩きしてしまった様で、風評被害も心配されています。


というのも、このアルブ谷に広がる地域の収入の多くは観光資源から来るもの。
観光客の減少、観光客を相手とする仕事の減少、、、という悪循環に陥らない為に、そしてもちろん住人の健康の為に何かしらの手を打たないと、煙突にフィルターをかけたり(アルブ谷の関係する19,000軒のうち、既に1,000軒で改良済み。しかしまだ18,000軒残っているのですよね。)、パッシーの町にある4市で共同運営されているごみ処理場をもう少し大気の流れのある場所に移すなどの手段も考えられているようですが。

アルブ谷を走る高速道路で大型トラックの運行を制限したり、またフランス全体でも「暖房の温度設定を1℃でも良いから下げて。」「使用していない電化製品の電源はこまめに抜くように。」「暖炉を出来るだけ使用しないように。」などという事が連日テレビなどで奨励されているのですけれども、まだ目に見えた結果は出ていない様です。