Freeride World Tour 2017 2017年フリーライドスキー・スノーボード世界選手権

この1月、1996年にスイスで始まったフリーライドスキー・スノーボードの世界選手権が初めてアジアで行われたのですが、その開催地となったのが我らが白馬( 長野県 )。

 

Freeride Hakuba FWQ4スター と Freeride Hakuba FWQ2スター の2つのイベントで構成されたこの大会。

Freeride Hakuba FWQ4 には FWT のカテゴリーからゲストライダー( ゲストと言ってもしっかりポイントは持って行きます )が11人参戦したそう。

 

* Freeride Hakuba FWQ4スター 

  世界で3000人以上の選手が参加するFWT( フリーライド・ワールドツアー )予選シリーズの中で最高レベルの大会。
  年間の獲得ポイントで上位10人は翌年にプレミアシリーズのFWTの出場権を獲得する。
  ( カテゴリー、男女、地域別で総10名なので、それぞれの枠では1~2名のみ )

* Freeride Hakuba FWQ2スター 

  日本のローカルライダー向けのオープンイベント。

  4種目合計で上位5~8名が Freeride Hakuba FWQ4スター の特別出場枠を獲得。

 

競技は非圧雪、非人口斜面で行われ、選手が滑ったライン( 滑走ルート )の難易度やコントロール、ジャンプなど以下5つの基準を踏まえた「総合印象」で採点されます。

 

① ラインの難易度

  競技者が山を降りる為に選ぶルート。

  リスクの度合い、ユニークさ、想像力、クールさなどが判断材料。

② コントロール

  自分のコントロール不可能な程リスクの高いラインを選択し、転倒や滑走をストップさせたライダーの得点を減点。

③ 流動性

  ストップ&ゴーの多すぎるライダーは減点。

  最初から最後まで、長いトラバースや、ラインを失うこと、登って逆戻りをした場合は減点。

  ジャンプの前に長い時間ストップした場合も減点。

④ ジャンプ

  重要な要素。

  クールなスタイルとアグレッシブなジャンプは大きく加点。

  大きさ、入り方、空中でのトリック着地、全体的なコントロールが採点の基準。

⑤ 技術

  スキーの技術。コントロールを失った際にそれがライダーの技術不足が原因であった場合減点。

  他の選手がターンを刻んだカ所で横滑りを行ったりすることも減点対象。

 

* 滑走を評価するために、裁判官は0から100までの100単位のポイントシステムを使用。

* ライダーがジャッジから見えない箇所を滑走した際の滑走は、ビデオによって判定。

 

 FWTの現在の登録選手は世界で3,000人以上。

大会はスイスにある競技連盟が主管し、この白馬大会はFWT実行委員会と白馬村観光局の主催。

 

開催条件は ① 平均斜度40度 ② 400mの標高差を持つ急斜面 ③ 選手が歩いて1時間ほどで会場に行ける ことなど。

競技連盟は白馬会場の優れた点として ① 競技を楽しめる遊び心のある地形 ② 鋭い傾斜があること ③ もっとも重要な点として評価されるのは優れた雪質――の3点を挙げ、そして宿泊施設なども含めて総合的に「白馬」が評価されたとのこと。

 

スキー人口が減少しているという今日。

フリーライドで新しいスキーの楽しみ方を広げ、また白馬の良い雪質を来日外国人スキー客に広く知らしめる事が出来たらと今回の開催に臨んだ白馬村。

 

結果的に、大雪に見舞われた上、寒波の影響で当初予定したコースより標高の低い場所で開催されたようですが、「白馬のブランド価値の向上とバックカントリースキー・スノーボードの安全啓発のきっかけになる大会だった」と、白馬側は高評価。来年の開催に向けてまた尽力していくと張り切っているようです。

 

FWTのゲストライダー7人と国際予選リーグを転戦している各国のスキー、スノーボード選手の42人、開催地として実施した日本人選手選考会を経た4人など55人が出場した中、スキー男子部門で見事に優勝したのは大阪府出身の楠泰輔選手。
スノーボード部門でもアメリカのトラビス・ライス選手が優勝したのはある意味「想定内」ですが、やはり日本の長野市出身の美谷島選手が2位に入る活躍を見せ、地元日本での開催に花を咲かせてくれました。

 

が、パソコンで夜中のネット中継( 時差があるので )を眠い目をこすりながら見ていた私の彼。

悪天候で競技距離が短くなった上、視界の悪さで「とにかく転ばなければ表彰台入り」という面白くもない大会だった、と途中で寝入ってしまったとか。


そこでつい思い出してしまったのがこちらでしばしば語られている長野オリンピックでのスキー競技。

「こちら長野からの中継です」の後に映し出されるのはいつもきまって「ザーザーザー」という音だけ伴う真黒な画面。
 当時、やはり悪天候で競技実行、中継に困難が生じていた のですが、その様子がこちらフランスの人気番組「ギニョール」でかなりこきおろされていたようです。

 

まあこちらは余談ですが、やはりこの悪天候の中でもトラビス・ライスだけは別格だったようです。

 

そんな彼の滑りは以下のビデオから。

そしてもちろん男子スキー部門で優勝した楠選手の滑走もぜひ見てみて下さい。

 

楠選手、この見事な白馬での滑りで、シャモニーで開催される( 予定であった )本ツアーにワイルドカードを利用して出場できることが決定。

 

シャモニーに到着後、自身のFBに次の様なコメントを残されていました。

 

『 FWTの大会でシャモニーに来ています!
こちら雪全然ないです、山はまだ大地の硬さしています!
でも町は大会でめっちゃ盛り上がっています!
思っていた以上にお祭り騒ぎです!
大会はコンディションを見ていつ何処でやるかわからないけど楽しみです!!』

 

もう少し楠選手の滑りを見たい方はこちらをどうぞ。

順延に順延を重ねた今回の大会ですが、参加者たちはアジアでの初開催をメイン競技以外でもしっかり楽しんでくれたようです。

 

ところで、現在世界最高のスノーボーダーの一人と言われる 1982年生まれのTravis Rice トラビス・ライス。

クリフ、シュート、マッシュ、ツリーの宝庫で世界各国から多くのビジターを集めるほどのドライパウダーが基本の標高2,000mにあるアメリカはワイオミング州、ジャクソンホールをホームマウンテンとする彼。

 

 ちなみに、

 クリフ  : 崖のこと。ここでジャンプする事をクリフジャンプと言う。
 シュート : 両サイドを岩で囲まれている滑走ポイント。

 マッシュ : 切り株、倒木等にマッシュルームの様に積もった雪。基本的にマッシュは飛ぶことが出来る。

 ツリー  : 密集した木と木の間を滑走すること。

 

2001年、SUPERPARKというイベントで30mを超えるスーパージャンプ( バックサイド・ロデオ、以下のビデオ①参照 )を成功させ鮮烈なデビューを飾った当時18歳のトラビス。
それが映像プロダクションの目に留まり、作品に参加した事で世界中に彼の名が知られるようになりました。
ジャクソンホールと言う唯一無二の地で磨きをかけたライディングは、天性の才もあることながら、たくましさという点で異彩を放っていたそう。

『THE ART OF FLIGHT』( 以下のビデオ② )という映像を手がけ、ここ数シーズンにわたって白馬で長期間こもり、何度もヘリを飛ばしながら新作の撮影を行っていたそう。

どうしてアジアの予選大会にこんな大物が、という声が上がっていたのですが、今回の参加はそういった事情があったのですね。
観る者には嬉しいプレゼントだったかもしれませんが、彼の( ほぼ約束されていたと言っても良い )優勝で高ポイント獲得を逃してしまった選手( 特に2位の選手 )は複雑な気持ちであったのではないでしょうか。

さて、本題のFWTですが今後の予定は以下の通り。

 

2月9日〜16日 Vallnord Arcalis Andorra

3月6日~11日 Fieberbrunne Austria

3月18日~25日 Haines Alaska United States

4月1日~9日  Verbier Switzerland

 

前述したようにこの1月27日から29日にかけてこのシャモニーでも競技が予定されていたのですが、こちらは雪不足の為、順延に順延を重ねた上、結局中止となってしまいました。

 

選手たちは予定通り集まり、街中でも様々なイベントが催され盛り上がっていただけに残念。

楠選手の勇士も見る事が出来なかったのですが、以下のビデオの中でインタビューを受けていますので、ファンの方、ぜひ見てみて下さい。

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